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　高円寺の無法地帯と呼ばれた我が家であるが、そんな我が家にもわずかながらルールというものが存在する。そんな数少ないルールのひとつに「室内禁煙」がある。我ながら驚くことなのだが、重度のヘビースモーカーに成り下がった私ではあるが、その実、この部屋に越してきて３年が経とうというのに一度として室内で喫煙に及んだことはない。
　室内では禁煙なのだから、喫煙の儀に至るには外出という行為が不可欠である。そして行き着く先は近所の公園という有り様なのである。冬場はなかなか厳しいものであるが、そういう時には喫茶店でコーヒーを並べることにしている。
　そんなわけで今日も仕事終わりに一服どころかガンガンにニコチン摂取に勤しんでおったのだが、私の座るベンチの前に黒ネコ様が一人おいでになったのだ。この黒ネコ様、やけに人懐っこい。しかもチラチラと私の顔色を伺っておる。これはアレか。食料の無心か。あいにくと今は食い物を持っておらん…と思ったら鞄の中からカロリーメイトが出てきたので一切れ差し出してみた。

　ネコ様、怪訝そうな顔をしつつチロっとなめてはみたがお気に召さぬようで、足早に他の食料を求めて立ち去っていった。ううむ、やはりカロリーメイトはいかんか。
　そのネコ様、暫く後に他の人からキャットフードを貰っているのである。つまり「次に来るときまでに用意しておけ」ということなのだろうか。ネコの道は奥が深い。