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■101 有事に備えて 2004/10/23

 今年は台風の当たり年、というらしい。そんな話は今までも何度か聞いたような気もするがとにかく実際問題として今年の台風どもはすごい威力である。停電、土砂崩れ、河川の氾濫、なによりその暴風雨自体が強烈である。看板やら屋根やら傘やらをポンポン吹き飛ばしていくのである。
 台風だけではない。地震も結構なものである。地震もここのところ激しさを増すばかり。今日も新潟で震度6の地震が幾度か発生し、新幹線が脱線したというではないか。怖いものである。遠く離れた地から唯々新潟の皆さんの無事を祈るばかりである。

 さて、こういった災害に対して我々の対策はいかがなものであろうか。有事に対する備えは万全だろうか。あなたの家庭にはいざという時の為に懐中電灯、手回しラジオ、備蓄食料、ロウソク、ロープ、鞭など揃っているだろうか。いや鞭はいらなかった。それは別の用途で使うものだ。

 こういったものさえあれば準備万端、備えあれば憂いなし。そう思っているとしたらあなたはまだまだ万端ではない。これらだけで有事を乗り切ることは容易ではないのだ。あなたに欠けているもの、それはあなたの心構えである。つまりいくら物質的な備えを万端にしたところで、精神的な備えが足らねば効果はさっぱりなのである。要はシミュレーションである。

 シミュレーションが足りない場合どうなるか。
 あ、停電やがな。やばいなー。懐中電灯どこやったかなぁ。痛っ、足の小指ぶつけてしもたがな。くそ、箪笥の糞餓鬼めが。後で折檻じゃ。ちゃうちゃう、暗て見えへんのじゃ。懐中電灯探しとんねん。懐中電灯どこやったかなぁ。押し入れの中とかやったら絶対探せへんぞ。やばいなぁ。あ、せやせや。確か机の足元に置いといたはずや。我ながらやるやないけ。んで机机っと。痛っ、おどれまた箪笥のボケか。ホンマにいてこますぞ。やっと机やがな。ほんで足元の・・・おっ、これかいなって何で鞭持っとんねん。
 あまりに情けなくて涙が出る。よりによって暗闇で鞭を持って小指の痛みを堪えているのである。それは何のプレイだ。

 人は想像することができる。イマジネーションを活用してこそ人類である。有事に対してどうあるべきかを想像し、シミュレーションしておくことで有事の際にその通りに行動できるのである。しかし世の中には想像力に乏しい人もいるだろう。そんな人のために私が、あなたが想像しやすいようなシチュエーションでシュミレートしようではないか。

 まずは基本設定からだ。あなたの名は信二。大学生で、ふらふらと遊び回りつつ近所の喫茶店でバイトをしているのだ。バイト先には店長の娘、高校生の美穂ちゃんがいる。美穂ちゃんはかわいいウェイトレスとしてこの喫茶店のアイドルとなっている。そんなアイドルの美穂ちゃんだが、あなたに対してはどうにもつれない様子。こないだも同じゼミの女の子が来たので、コーヒーを出しながら世間話に花を咲かせていたら「信二さん、ちょっと倉庫から豆を出してきてください。」といって必要なのか疑わしいくらいの量の豆を運ばされた。客がいない時に話をしようにも、美穂ちゃんは食器を洗いだしたりして乗ってくれない。ふとした拍子に美穂ちゃんを見ると一瞬目が合って、そっぽを向かれるのだ。男嫌いかと言えばそんなこともなく、可愛くて愛想のいいウェイトレスという触れ込みで大学の野郎どもが大挙してくるほどだ。

 そんな喫茶店でバイトしていたある日のこと。そろそろお客が来だすかなといった午後3時頃、突如大規模な地震に見舞われるのである。阪神大震災を凌駕するほどの奴だ。あまりの事にカウンター内で立ちすくむ美穂ちゃん。そこに食器棚が倒れかかるのだ。そこであなたは美穂ちゃんを抱き抱え、背中側を食器棚に向け、身を呈して美穂ちゃんを守るのだ。
 「美穂ちゃん大丈夫かい?」
 「はい、ちょっと膝を擦りむいた程度で何とか・・・」
 「よかった。じゃあカウンターの下に入って。そっちの方が安全だ。」
 そうしてカウンター下に移動する美穂ちゃん。
 「俺も潜り込むにはちょっと狭いかな。まあいいや。」
 そこでようやく落ち着きを取り戻したのか、美穂ちゃんが叫ぶ。
 「・・・!信二さん、怪我!」
 「痛た・・・言われると痛みが増すなぁ。まあ揺れも収まったみたいだししばらくこうしてても大丈夫だろう。」
 「バカ!いいからあたしの横にきて!」
 「狭いだろ、いいのかい?」
 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!早く!」
 「わかったわかった。じゃあそっち行くから。」
 そして狭いカウンターの下に二人並んで座る。
 「信二さん、怪我は?」
 「棚に背中をやられたのと、あとはコーヒーカップに頭突きされたくらいかな。」
 「バカなこと言ってる場合じゃないでしょ!ほら、ハンカチだけどこんなのでもあった方がましでしょ。頭に巻いて上げるから。」
 「ん・・・ありがとう。洗って返すよ。」
 「またバカなことばっかり言って。・・・ねぇ、なんで助けてくれたの?」
 「へ?」
 「だってあたし、かわいくないし・・・」
 「なに言ってんのさ。うちの大学の奴ら、美穂ちゃん目当てできてる奴ばっかりじゃん。美穂ちゃんはかわいいよ。」
 「・・・じゃあ信二さんは?」
 「俺?俺も美穂ちゃんのこと可愛いと思うし、もっと仲良くなりたいと思ってる。けど美穂ちゃんに嫌われてるっぽいしなぁ。」
 「違うの!あたし・・・あたしも信二さんと一緒にいたいの。けど可愛くなれないからどうしていいか分からなくて・・・」
 「美穂ちゃん、俺がバイト始めたのは美穂ちゃんが目当てなんだよ。美穂ちゃんのことが好きだから。美穂ちゃんはそのままでいいんだよ。俺はそのままの美穂ちゃんが好きなんだから。」
 「あたしも・・・信二さんが好き・・・」

 ほら見たまえ。シミュレーションではこうなるのである。見事なハッピーエンドではないか。暗闇で鞭持って小指の痛みを堪えるなどという情けない事態はかくも華麗に回避できるのである。あとはそれ、シミュレーションどおりに行動できるように頭の中で繰り返すだけである。とっさの時にそう動けるように体に刻み付けるだけである。
 なお、当方では高校生の美穂ちゃんはご用意できぬので注意されたし。むしろ誰か当方に高校生の美穂ちゃんをご紹介ください。大丈夫、当方シミュレーションは万全ですから。

エレメンタルノートさん:誰かに書いてもらうという試み(2004.10.20)より



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